空海の絶対的なカリスマ性を見せつけられるシーンから始まり、その対比としての最澄の行き詰まりっぷりに心が痛む前半です。
泰範に入れ込まれて心が揺れる最澄の危うさにハラハラします。
そしてまさかの裏切り。
あからさまに自分を慕ってくれる泰範への態度には、高尚な僧でありながら人との個人的なつながりを渇望していた最澄の孤独な心の内を垣間見ました。
実際、泰範以外の僧は最澄の体調を気遣って教えを請うことを遠慮して、まるで腫れ物扱いです。
最澄という人は、僧でありながら心の弱い人であったのかな、と思わせる展開から、後半の僧としての凄みを見せつけられるシーンは圧巻です。
そして、「犀の角のようにただ一人歩め」という以前にも出てきたモノローグと、人は一人では生きられないと言おうとしているかのようなシーンが繰り返し描かれ、ついに空海と最澄が再び会います!! 鳥肌が止まりません!
その後の、空海と最澄の対話も見ていてとても穏やかな気持ちになり、最後の最澄のセリフに、最澄の空海に対する畏怖や敬愛がすごく込められている感じがしました。
空海を信頼し期待する空海の周りの人々と、最澄を支えようとしつつも最澄を孤独に貶める人々との対比が切なく壮大に描かれた10巻です。