ニュクスの角灯(ランタン)
最終巻は、百年(モモトシ)がヴィクトールと共にパリで浮世絵を紹介する所から始まります。
私達現代の日本人でも、今浮世絵について詳しい方はそれほどいないのではないでしょうか。
百年は、「浮世絵は一般大衆向けに刷られた娯楽媒体」と説明しています。
そして、「版木の磨耗していない初期に刷られたものが価値が高い」とも。
浮世絵のデザイン性についても、こんな描かれ方の絵画は珍しいということを言っており、確かに一理あると感じました。
日本にいるとそこまで感じませんが、海外から見れば、浮世絵の現代の漫画にも通ずるようなパースや線は当時はとても斬新なデザインとして捉えられたのだと思います。
その後、物語はジュディットと百年の話になりますが、ここでも美世が養父から貰った試作のブローチが発端となり、一悶着あります。
ジュディットの人を信用できないという心の弱さ、そして嘘をつくことで人を安心させてきた美世が、心の底からジュディットに対して話した言葉には、胸をつくものがありました。
また、おたまさんもカズマも、どん底に落とされた中で光る一筋の希望があり、救われたかと思います。
そして所々で入るマリーの底抜けの明るさは、読み手にとっても良い息抜きになっているのではと思います(個人的には一番好きなキャラクターです)。
最後に、美世の娘が戦後幸福でありますよう、願ってやみません。