19話 Kiss キス 10月号
今回は、少し時間が戻って、主人公の薊野ありすが中学生だったころの、同級生たちのようすが描かれていました。ありすたち薊野家が借金取りから逃げるために必死になっていたころ、友人や同級生たちがどんな気持ちでいたのかがわかりました。
周囲の人たちには言えない事情だったとはいえ、親しくしていた人が何の説明もなしにいなくなってしまったという事件が、友人たちから見るととても大きなできごとだったということが、じわりじわりと伝わってきました。ひとつのできごとが、誰がどんな気持ちで見ているかによってこれだけ違いが出てくるということがわかって、読みごたえがありました。
特に、ありすの家の借金をどうにかしようと奔走していた茜坂理一のようすには胸が痛みました。理一はありすに黙って借金の整理に取り組むいっぽうで、ありすの行方を探していました。ようやく居場所を見つけたと思ったら、ありすたちは引っ越してしまった後でした。
ありすたちがいないことを知った理一が、自分の伝えたいことを伝えられなかった場面が、とても印象的でした。今まで張りつめていた緊張の糸が切れたかのように座りこんでしまう理一を見て、やりきれない気持ちになりました。
理一が自分の気持ちを素直に言えるのは、一緒に動いてくれていた榎本だけでした。大切な人を守りたいという理一の気持ちに寄りそってくれる大人がいて、本当に良かったなと思いました。
過去のできごとを読んだことで、あらためてありすと理一が再会することができて良かったと思いました。2人にはこれから穏やかな日々を過ごしてほしい、幸せになってほしいなと思います。
20話 Kiss キス 11月号
今回は、主人公の薊野ありすと麗珠、紅子が、大切な人と再会するという話でした。
ずっと会えなかった大切な人がすぐ近くにいることに気がついたありすが、自分の感情を思いっきり出す場面には感動しました。
今まで母親や妹と一緒に追っ手から逃げ続けていたありすですが、借金の問題が解決したことで、今までの緊張がいっきにほどけたのだろうなと思います。
少しずつ笑顔が増えて、冗談も言えるようになってきたありすでしたが、今回意外なタイミングで登場した相手には、ずっと言いたい気持ちが溜まっていたのだろうなと思いました。
まったく予測のできない状況で再会を果たしたありすたちでしたが、その時の麗珠の対応がいいなと思いました。
再会した相手の言葉を、麗珠はきっぱりと拒絶します。言葉だけを見ると冷たい対応に見えますが、実際は相手に負担をかけまいとする麗珠の気持ちがあるのではないかと感じました。
この人が母親として、一家の主として、ありすと紅子を守ってきたのだなということを、つくづく実感しました。こういう風に自分で大切な存在を守ることができる女性だから、一家はこれまでの危機を乗りきることができたのだなと思いました。
今までどこか不安定だった紅子のようすが、今回の再会を通じていっきに改善したのも良かったです。ありすや麗珠の気持ちにどこか遠慮していた紅子も、これでのびのびと過ごせるようになるのではないかなと思いました。