ネタバレOK?なっちゃんのメモめも

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妖狐×僕SS 最終回 結末 ネタバレ注意

長かった百鬼夜行もついに終わりを告げました。

たくさんの人が不幸になりました。この一連の騒動で最終的に幸せを掴んだ人なんていなかったように思います。みんな心に傷を負って、あるいは命を落として、百鬼夜行という長旅に幕を引きました。それでも、思紋と命(みこと)が最後に互いのことを本当の意味で理解できた点は、一連の騒動のごく僅かな希望と救いだったように思います。

時は流れて、百鬼夜行から三ヶ月後。その後のキャラクターの様子が描かれていきます。

百鬼夜行よりもさらに長く続く、妖怪という存在。その力も近年では少しずつ弱まってきており、いつかは妖怪そのものの存在も消えてしまうのではないかという見方が強まっているとカルタは言います。妖怪である彼らにとっては寂しいことですが、永遠でないからこそ、今を大切に、感謝の気持ちをもって生きていこうというカルタの言葉にはただただ頷くばかりです。渡狸もまた、カルタと気持ちは同じといった様子。このあたりの感覚は、人間である一読者としても胸に刻んでおきたいですね。

男性嫌悪であった野ばらにもまた、心情の変化が訪れます。これまで幾度となく匂わされてきた反ノ塚が野ばらを想う気持ちが、ここに来て成就の気配を見せつつありました。風来坊のごとく自由気ままに生きていた反ノ塚ですが、どうやら地に足をつけて生きていこうという決意を固めたようです。明言はしていませんが、恐らく家業を継ぐ気なのでしょう。この二人は作中だと恋人関係というよりは相棒に近い位置付けでしたが、反ノ塚はここにきて明確に野ばらと結婚したいと意思表示をしましたし、野ばらの反応も満更ではなさそうな態度。ともに過ごした時間がお互いの生き方を大きく変化させた二人ですが、その関係がもう少し変わる日もそう遠くはなさそうです。

そして、個人的には作中もっとも今後が心配だった男、夏目。彼は蜻蛉の強引な誘いに無理やり乗せられるような形で、自分の未来を探す旅へ出ることを決めました。妖怪・百目の能力で数多の未来を視てきた彼ですが、自分の未来にはどこか執着がなく、自分のために生きようとしていない人でした。短命である百目の宿命を、諦めとして受け入れていたのです。そんなことはお見通しであった蜻蛉は、夏目に「次は貴様の未来を探しに行く!」と強い言葉を投げかけます。蜻蛉の強引すぎる気遣いが、諦観主義者の夏目にとってはちょうどいいくらいなのだと思います。蜻蛉は夏目と旧知の仲ですし、思慮深く周りをよく見渡してくれる人ですから、夏目の未来の導き手としてはこの上なく心強い存在です。これからは人のためだけでなく、自分のために生きる道が見つけられることを祈ります。

最後に、この作品の象徴とも言える二人。御狐神と凛々蝶の関係も、ようやく恋人らしいものとなっていました。御狐神はまだまだ従者気分が抜けきっていない様子ではあるものの、凛々蝶の望む対等な恋人関係には少しずつですが確実に近づいているようです。それにしても、御狐神が凛々蝶に見せる豊かな表情、蜻蛉や夏目にも見せてあげたいですね。本人はそんなものを見られた日には二人を抹殺にかかりそうですが。

物語は凛々蝶の独白で終わります。これがまた、非常に趣深くてぐっと来るのです。

この作品はループものの性質を持ちながら、そのループを抜け出すためにキャラクターたちが奔走する物語です。物語の冒頭は凛々蝶の「時間は重みだ」という独白から始まりますが、その時の彼女の語り口はあまり明るいものではありませんでした。自分がいかに周囲を不快にさせる存在であるかを滔々と語ります。彼女にとっての「時間」とは、早く終わってほしいもの、続いていくことに嫌気がさしているものであるようでした。

しかし、最終話の凛々蝶の独白は明らかに冒頭のそれとは異なります。夏目から告げられたそう遠くない未来に想いを馳せ、今後の時間を大切に過ごしていこうといった決意の独白です。物語を通して過ごした「時間」は、凛々蝶を明るく前向きな女の子へ変えてくれました。彼女にとって、「時間」はもう忌むべきものではありません。主人公である凛々蝶の成長物語として、これ以上ないラストであったと思います。『妖狐×僕SS』はこれにて完結ですが、キャラクターたちの時間はこれからも確かに流れていきます。彼らの過ごす未来が明るいものであるよう願ってやみません。