エレガンスイブ 7月号
笑いと悲しみがほどよいバランスでミックスされた、面白い読み切りでした。
登場するのは、赤ちゃんの世話に疲れきった母親です。忙しすぎて現在時刻がわからなくなったり、赤ちゃんのおむつや衣服が部屋の中に置きっぱなしになっているところから、この母親ができる限りのことをしているということが、よくわかります。
それに、よく見ると、おむつも衣服も、捨てるまでいかないまでも、きちんと一か所に積みあがっています。この背景を見ると、母親がもともときちんと家事をこなしているけれども、赤ちゃんの世話がたいへんでそれどころではなくなってしまっている、ということが伝わってきます。
こうした細やかな描写を通じて、母親が追いつめられていることを伝えているところが、とても上手いなあと思いました。
こんな風に疲れきってしまった母親を、ご近所の主婦たちが助けに来てくれます。その名も「シュフレンジャー」です。
シュフレンジャーたちは、赤ちゃんの世話と家事、掃除を代行して、母親を休ませてあげます。メンバーたちはまっとうな人格と人生経験を持った主婦ばかりです。自分の技能を発揮して、てきぱきと部屋を片づけていくシュフレンジャーたちの活躍には、ぐっときました。
特に、あたためたルイボスティーを飲めるかどうかを母親に確認したうえで渡すところには「さすが!」と思いました。
母親が母乳が出ないことに悩んで追いつめられていたなど、描いている問題そのものは深刻なものです。しかし、シュフレンジャーが本当に戦隊の衣装を着て登場したり、かっこいいポーズで名乗りを上げたり、移動はママチャリで安全運転だったりと、つい笑ってしまう場面もあって、とても楽しく読めました。
最近はブログやSNSなどで家事や育児の現実を表現する人もいます。それらの文章や漫画を見ていると、本当に家の仕事というのは、会社の仕事と変わらない、責任感や創意工夫が必要な仕事なのだなあということを痛感します。
この漫画のように、周囲の助けが得られず、孤立している家事労働者はおおぜいいると思います。シュフレンジャーのような、人格と経験を兼ね備えた家事・育児支援が実現したらいいのになあ、と強く思いました。